きかっけも始まりも 葉月瞬
『さぁ〜、いよいよ今年もやってまいりました!
一攫千金を夢見るトレジャーハンター達の夢の舞台!
第三十三回! トレジャーハンター大会! 略して、TH大会!!
今年も、派手にいってみよぅ〜〜』
「……別に、略さ無くても……」
◇◆◇
確か、こんな始まりだったと思う。
会場となったポポルは、煮え滾るような異様な熱気に包まれていた。
大会に参加した理由は、十人十色だった。真実一攫千金を夢見る者、本当の自分を取り
戻したい者、新たなる自分の可能性を見出したい者、技術を磨きたい者、等々。俺もその
内の一人だったが、隣に居た黒いバンダナの奴ほどには騒ぎに参加仕切れなかった事は覚
えている。舞台上でショーよろしく右に左に行ったり来たりしているバニーちゃんの尻が
如何にも気になって、話の半分も聞いていなかった。が、大会の主旨だけは聞き漏らさな
かった。
大会の主旨は、こうだ。
俺達みたいな“優秀”なトレジャーハンター達を集め、トレジャーハントの頂点を互い
に競い合って欲しい、との事だった。
いけすかねぇ。
俺はともかく、他の連中はどっから何処からどう見たって余り大した事無い連中ばかり
じゃないか。異彩を放っている連中の中にあって、唯一まともそうなのは、俺と隣の黒バ
ンダナの奴くらいだった。
俺は思ったね。
やばいやば過ぎる。この集団には、俺は付いていけないと。
だが、気が付くと俺は開会式の最後の方まで居たんだ。何故かその場から即座に立ち去
ることが出来ないほど、俺はその場の雰囲気に飲まれちまっていたのかもしれない。悔し
いけどな。
それは、不意に始まった。
何でも、入り口で手渡された数字の書かれた紙片を基にくじ引きをするのだそうだ。舞
台上で発表される数字と自分の数字が合っていれば名乗りを上げ、次に呼ばれた奴と二人
ペアで組むのだそうだ。
如何してだか、理由は如何ともしがたい。俺自身は一人でやりたかったが、大会の規定
とかで二人ペアじゃないと駄目なんだそうだ。まったく、やってらんねぇぜ。
くじ引きの結果、俺と組む事になったのが――。
◇◆◇
「おい! いい加減、起きろよ!! 俺にばっかりたずな引かせんじゃねぇ!」
黒バンダナの怒声で、俺はやっと目を覚ますことが出来た。
茹だる様な暑さ。其の最中、しっかり両の眼を開けておけという方が無謀である。そん
なことを呆然と考えていると、思考が伝わったか黒バンダナが俺に向けて震える拳を振り
上げていた。
「……頼むから、殴らないでくれ」
願いは聞き届けられなかった……。
この心の狭い黒バンダナの名前は、ファングとか言うのだそうだ。
一応礼儀の一つとして、ペアを組んだその日に名前だけは名乗りあった。
「俺は、ギゼー。よろしくな」
「俺はファング。……やるからには、一位を目指そうなっ!」
と、こんな風にだ。至って、普通である。
その後、親交を深めるために酒を酌み交わし、すっかり意気投合した俺達は――意気投
合したまま現在に至っている。
「しっかし、あっついよな〜。ここ、どこだ〜?」
俺は、掌を団扇代わりに扇ぎながら呟いた。
汗だくの首を左右に振って、周囲を見渡してみる。十キロ四方見渡す限り、砂、砂、砂。
砂の海がロゴ車の四方を取り囲んでいた。
「だ〜〜〜! 何で、砂漠なんだ〜〜!!」
俺が茹だって背後の幌に寄り掛かるように叫ぶと、ファングもまた茹だるように突っ込
みを入れる。
「お〜まえが、千金の地図を手に入れた〜とか言って来たからだろ〜」
手で日陰を作るように翳しながら、俺は再び回想回廊に入り込んでいた。
◇◆◇
「千金の地図」を手に入れたと嬉々として宿の扉を開け放ったのは、開会式が終わって
数日が過ぎた頃だった。
ポポルの穏やかな気候の下、ファングが宿屋の二階の一室に陣取ってまったりとしてい
た昼下がりの一時だった。
「おい! 喜べ、ファング!! 俺達が一気に優勝できるぞっ!」
「……あ?」
人を散々待たせて置いて何を言うか、といった非難轟々なファングの視線も気にせずに
早速俺は手に入れて来た地図を備え付けの机に広げて見せる。
「いいかぁ〜、千金が埋まっているって噂の地図を手に入れて来た。まず、ジカに行って
砂漠声の準備をして……」
「ちょっと待て、砂漠って!?」
「ん? 何もそんなに驚く事無いじゃないか。砂漠の砂の中に金貨が埋まっている事くら
い、良くある事だろ?」
「……良くあって、たまるか……」
ファングの静止も聞かず、俺達二人は共に砂漠の奥地へと旅立って行ったのだ――。
◇◆◇
「なあ、本当にこの道で良いんだな?」
いい加減変わってくれと言わんばかりに、ファングが振り返り様に睨む。俺は相も変わ
らず幌の中で伸びている。
「ん? ああ。この地図によると……」
「ん? どうした?」
俺が急に地図を片手に押し黙ってしまった為、ファングが不審の眼差しを向けつつ、ロ
ゴ車を止め地図を覗き込む。その地図には、目印に付けられたバッテン以外道らしき道も
目印らしき目印も無かった。あえて目印を探すとすれば、それは小規模なオアシスぐらい
である。それも、名も記されていないぐらいだからきっと今はすっかり枯渇してしまって
いるだろう。
「ま、まさか……」
微かな憶測と悪い予感を胸に、ファングは恐る恐る俺の方に向き直る。
「……その、まさかさ。…………迷った」
「迷ったあぁぁぁ!?」
円らな瞳で虚空を見詰めていたロゴが、一声大きく嘶いた。